家庭での中毒?!

水で膨らむビーズ

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水で膨らむビーズの危険についてしっていますか?

「水で膨らむビーズ」というものをご存知ですか?観葉植物の水分保持やインテリアとして使われたりするもので、意外と自宅にある方もいるかもしれません。購入時は2mm程度の乾燥した小さな粒ですが、水を吸収させると150-1500倍にもなり1cmを超える大きさになります。ポリアクリル酸ナトリウムという高吸収ポリマーが主成分で、水を大量に吸収して保つことができます。そのためおむつなどにも使用されています。

実は、我が家でも子供の夏休みの自由研究で、このビーズがどれぐらい水を吸うのか実験しました。水を吸ってどんどん大きくなる様子はとてもおもしろかったです。

こちらのビースは「ぷよぷよビーズ」とも言われていて、以前は子供用のおもちゃとしても販売されていました。しかし、誤飲などの事故があって、現在は玩具としての販売には一定の制限がかかるようになっています。1しかし、園芸用品などとしては依然としてオンラインでも購入することができます。

では、このビーズにはどんな危険性あるのでしょうか?

水で膨らむビーズによる事故

このビーズ、びっくりするぐらいの吸水性があるため、ものによっては3cmを超えるような大きさになります。もし子どもが謝って飲み込んでしまったら…?

お腹の中で水を吸って大きく膨らんで、腸の中で詰まり手術が必要になることがあります。2なかには手術をしたけれど、細菌感染を併発して残念ながら亡くなってしまったという例も報告されています。

日本国内でも十二指腸の閉塞を起こして手術が必要になったというケースがあります。3特に6ヶ月〜3歳ぐらいの幼児は、自分で動き回れるようになり、何でも口に入れてしまう時期です。しかも「ビーズを飲んだ」と自分では言えないことが多いため、発見が遅くなるリスクがあります。残念なことに、症状がでてから病院受診しても、原因がわかるまで時間がかかる可能性が高いです。子供が吐いていたら多く人は胃腸炎と考え、いきなりビーズが原因とは考えません。医師も吐いている子ども全員にレントゲンや超音波などの検査をすることはあまりなく、誤飲の可能性に気が付きにくいこともあります。

「もしかしてビーズを飲んだかも?」と思ったら、ちゃんと病院で伝えることが大事です!

ビーズによるその他の危険

「膨らんで詰まるのが問題で、化学物質としては安全なのでは?」と思うかもしれません。

しかし、 製品によっては有害な成分を含んでいる可能性があります。アクリルアミドのポリマーで作られたビーズを誤飲して、手術で大部分をに取り除いたにもかかわらず、ジェル状になったビーズの一部が体内にのこり、アクリルアミドによると考えられる中毒症状が発生。その結果、発達が遅れ(運動機能や会話の遅れ)が報告されたケースがあります。4このように、物理的に詰まるだけでなく、中毒を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。

まとめ:水で膨らむビーズ、小さな子供には危険!

・誤飲すると腸閉塞のリスク

・診断が遅れる可能性が高い

・一部の製品は有害物質を含む可能性がある

→子供の手の届かないところに置くというのが大事です。

1. 子供の安全のため玩具への新たな規制が導入されます (METI/経済産業省). Accessed February 5, 2025. https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230516002/20230516002.html

2. Caré W, Dufayet L, Paret N, et al. Bowel obstruction following ingestion of superabsorbent polymers beads: literature review. Clinical Toxicology. 2022;60(2):159-167. doi:10.1080/15563650.2021.1987452

3. 幼児が水で膨らむボール状の樹脂製品を誤飲-十二指腸閉塞、開腹手術により摘出-(発表情報)_国民生活センター. Accessed February 5, 2025. https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20151001_1.html

4. Haugen A, Friedman E, Duff I. Intestinal Obstruction and Neurotoxicity Associated With Water Bead Ingestion. Pediatrics. Published online January 28, 2025:e2023065575. doi:10.1542/peds.2023-065575

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プロフィール
千葉拓世
千葉拓世
中毒好き救急医
ひょんなことから中毒診療に魅了され、今では救急医として日々中毒診療に携わっています。救急科医としては、さまざまな患者さんに対応していますが、特に中毒に関する知識と経験を深めてきました。 家庭では、良き父親であることを心がけているつもりですが、その成果については自分でも判断しきれない部分があります。家族との時間を大切にしながら、仕事にも全力を尽くしています。 このブログでは、救急や中毒に関する情報を不定期にお届けできたらと思っています。少しでもお役に立てる内容を提供できれば嬉しいです。
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