ラオス旅行でのメタノール中毒

若いバックパッカーが突然亡くなったのはなぜ?
2024年11月、ラオスにおいてメタノール中毒が疑われる若者の旅行者死亡事件が発生しました。イギリス、アメリカ、オーストラリア、デンマークからの旅行者、合計6名が亡くなったと報道されています。1現時点ではメタノールが原因と正式に特定されたと報道されていませんが、多くの報道でメタノール中毒の可能性が指摘されています。実際に患者を診察した医師がメタノール中毒と判断したのか、あるいは検査によってメタノールが検出されたのかは明らかではありませんが、若いバックパッカーが短期間で亡くなるという事態は、メタノール中毒の深刻さを物語っています。
メタノールとは?
メタノールとは、エタノールと同様にアルコールの一種です。通常、飲料用アルコールとして使用されるのはエタノールで、飲むと酔ったり、抑制が取れて行動が大胆になったりすることがありますが、適量であれば致命的な影響はありません。一方、メタノールは酩酊作用もありますが、その後に現れる中毒症状が問題となります。重篤な場合、死亡や脳出血、脳梗塞、失明といった深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。特に失明はメタノール中毒の代表的な症状であり、その危険性から「目散るアルコール」と呼ばれることもあります。
わずか10mlの摂取で失明を引き起こす可能性があり、30ml程度の摂取でも致命的となるといわれています。特にエタノールと混ざっている場合、初期の酩酊状態では通常の飲酒と区別がつきにくいため、発見が遅れるリスクがあります。
メタノール中毒の実態
日本国内ではメタノール中毒は稀ですが、第二次世界大戦後の混乱期にはメタノールが混入した酒類による中毒が多数発生しました。現在も東南アジアでは、密造酒のコスト削減や量を増やす目的でメタノールが混入されることがあり、多くの犠牲者が出ています。
国境なき医師団(国際的な緊急医療団体)によると、2025年1月22日時点で過去1年間に105件のメタノール中毒事件が発生し、約2400人が影響を受け、796名が死亡したと報告されています。特に発生が多い国は、インドネシア、インド、パキスタンなどのアジア地域となっています。2
旅行者への注意喚起
今回の事件は欧米からの若い旅行者が犠牲になったことで、世界的に注目を集め、日本を含む先進国でも報道されています。しかし、メタノール中毒は東南アジアを中心に発展途上国で依然として多発しており、深刻な公衆衛生問題となっています。
外務省も注意喚起を行っており、海外旅行中にアルコール飲料を購入・摂取する際は以下の点に注意することが推奨されています。
- 信頼できる酒屋やバー、ホテルなど認可を受けた施設で購入する
- 自家製のアルコール飲料を避ける
- ラベルに改ざんの疑いがあるものを飲まない
安全な旅行を楽しむためにも、飲酒に関するリスクを理解し、慎重に行動することが重要です。
1. 飲料にメタノール混入か、ラオスで外国人観光客6人が相次ぎ死亡…日本大使館も注意呼びかけ : 読売新聞. Accessed January 22, 2025. https://www.yomiuri.co.jp/world/20241124-OYT1T50043/
2. outbreaks worldwide. MSF. Accessed January 22, 2025. https://methanolpoisoning.msf.org/en/outbreaks-worldwide/