G-6BGPL5NXDT それってほんとにヤマイモ!?|救急と中毒のホントの話

それってほんとにヤマイモ!?

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ヤマイモと間違えやすい植物

山芋鉄板と言えば、居酒屋の定番メニューのひとつですよね。コロナの自粛はだいぶなくなったものの、最近は年のせいかみんなでワイワイ居酒屋に行くことが少なくなりましたが、山芋のとろっとした食感、やっぱり美味しいですよね!火を通さずに山芋を刻んで梅肉と一緒に食べるのも、シンプルながら絶品です。私もヤマイモが大好きなんですが、実は時々ヤマイモだと思って食べたものがヤマイモじゃなくて、冗談抜きで大変なことになることがあるんです。

2024年12月、高知市内で80代の夫婦がヤマイモと間違えてグロリオサという植物を食べて入院するというニュースが流れました。1グロリオサ、聞き慣れない名前かもしれませんが、ユリ科の植物で「ユリグルマ」や「キツネユリ」とも呼ばれています。赤い花が特徴的で、英語では「Fire lily(炎のユリ)」とも呼ばれています。花自体は間違えることはないと思いますが、このグロリオサの根は、ヤマイモに非常によく似ているんです。そのため、誤ってグロリオサの根を食べてしまうことが、昔から時々問題になっています。

毒か薬か?コルヒチン

問題は、このグロリオサに含まれる「コルヒチン」という成分です。実は、このコルヒチン、痛風や心膜炎などの治療薬としても使われているんです。古代ギリシャから使用されてきた、歴史ある薬なのですが、少しだけ治療量をオーバーしてしまうと中毒を引き起こしてしまいます。薬の作用の仕組みを詳しく説明すると少し難しくなってしまいますが、簡単に言うと、コルヒチンは細胞が分裂するときに必要な「紡錘糸」を作らせなくしてしまうため、細胞が死んでしまうんです。これ、抗がん剤と似たメカニズムなんですね。最初はひどく嘔吐して、その後一旦症状が落ち着いたかと思ったら、急に悪化して突然死に至ることもあります。回復した場合でも、抗がん剤治療後のように髪の毛が抜けるなど、非常に大変な中毒です。

過去の事例ではどうだったか?

過去にも、グロリオサを誤って食べた方が亡くなるという悲しい事例がありました。2006年と2007年には、グロリオサを食べた方がどちらも命を落としています。2コルヒチン中毒の治療は非常に難しく、効果的な治療法があまりないのが現実です。嘔吐が続けば、点滴や吐き気止めを使って対処するのが一般的ですが、決定的に効く治療法がないため、運に任せる部分も多いのです。フランスではコルヒチンの拮抗薬が開発されて使われたという報告もありますが3、日本ではまだ手に入りません。治療がうまくいったことを願うばかりです。

何か対策は?

グロリオサは、すりおろしてみてもヤマイモのような粘り気がないこと、またヤマイモのようなひげ根がないことが違いと言われています。でも、もしグロリオサとヤマイモが近くに生えていて一緒にすりおろしたら、見分けがつかないかもしれません。見た目がとてもよく似ているので、注意が必要です。

・知らない食べ物は食べない

・食べ物と似たような食べられないものを一緒に置かない、植えない

・収穫したものを他人に安易に譲らない

・自信がないなら食べない

自然の恵みを楽しむのは素晴らしいことですが、ちゃんと食べられるものと食べられないものを区別するのは実は難しく大変だということを、心に留める必要がありますね。

皆さんも、どうぞご注意を!

  1. ヤマイモと間違えてユリ科のグロリオサ誤食か 高知市で夫婦が食中毒:朝日新聞デジタル. 朝日新聞デジタル. December 18, 2024. Accessed January 26, 2025. https://www.asahi.com/articles/ASSDK4GB3SDKPLPB00GM.html?iref=ogimage_rek
  2. 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:グロリオサ. Accessed January 26, 2025. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082123.html
  3. Baud FJ, Sabouraud A, Vicaut E, et al. Treatment of Severe Colchicine Overdose with Colchicine-Specific Fab Fragments. New England Journal of Medicine. 1995;332(10):642-645. doi:10.1056/NEJM199503093321004

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プロフィール
千葉拓世
千葉拓世
中毒好き救急医
ひょんなことから中毒診療に魅了され、今では救急医として日々中毒診療に携わっています。救急科医としては、さまざまな患者さんに対応していますが、特に中毒に関する知識と経験を深めてきました。 家庭では、良き父親であることを心がけているつもりですが、その成果については自分でも判断しきれない部分があります。家族との時間を大切にしながら、仕事にも全力を尽くしています。 このブログでは、救急や中毒に関する情報を不定期にお届けできたらと思っています。少しでもお役に立てる内容を提供できれば嬉しいです。
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